イメージの話ですが、福祉の世界や、利用者さんを取り巻く人的、物的環境は味噌汁みたいなものだと思っています。
味噌だから、多少の味のブレがあってもなんとか成立しているようにも思いますが、実は繊細できちんと調理しないと本当に美味しい味は出ません。これは、支援に例えられます。なんとなく関わって、それなりの成果を出すことはできるけど、根拠や技術がないと、本当にいい支援に結びつかないということです。
しかし、マニュアルばかりに頼ったものも、美味しくないでしょう。偶発的なアイデアが、味噌汁をより深みのあるものにすることもあります。支援に関しても、そういった一瞬の閃きが大事な場面があります。これは、経験や技術は関係ない部分とも言えます。
目標は、「美味しい味噌汁を作る=よりよい生活を送る」になるかと思うので、その辺りのイメージを膨らませてほしいと思います。
常々、私は「福祉=味噌汁」だと思っているので、そのことを好きに書いていきたいと思います。
まず、味噌汁は万能だなと思うわけです。野菜を入れても美味しい、豆腐や油揚げを入れても良し、豚肉が入った豚汁だっていい。主役が何であっても、それを引き立てる懐の深さがあるということです。これって、福祉的な感じがしませんか?つまり、福祉業界は味噌汁のように懐が広い世界だと思うわけです。
ただ、絶対に合わない具もあるわけで、それは少し考えどころとも言えます。例えば、味噌汁にチョコレートやアイスを入れたら…あまり美味しくないでしょう。
ところが、味噌風味のチョコやアイスは存在することから、「反対から見たら別の側面がある」という部分もなんだか福祉的です。絶対に不味いと決めつけちゃいけないということですね。
そういえば、豚汁は二日目に味が馴染んで美味しくなりますよね。これは、人間関係の醸成と似ているような気がします。一見馴染みの良くない利用者同士、または職員同士、さらに利用者と職員も、同じ目的があれば馴染んでくることの例えです。味噌汁的には、「美味しい味噌汁であり続けること」で、福祉的には「よりよい生活を目指すこと」でしょうか。
基本理念とも言えるベースがあれば、大幅にズレることはないと私は思います。
しかし、「味噌汁をコンソメスープにしよう!」という流れになってしまうと、途端に具合が悪くなってきます。これまでに揃えた具も合わないものが出てきます。福祉の世界でも、これに似たようなケースがあります。「この利用者さんにはこうあるべきだ!」と一部の職員が勘違いをしてベースが変わってきてしまうと、あらゆる不具合が出てきてしまうでしょう。
そんなときは、味噌汁は味噌汁でそれを基本に、例えばおじやにしてみたり、うどんを入れてみたり、アレンジをする柔軟性が必要だと思います。そうです、味噌汁の具も柔軟性をもって考えてみるといいですよね。言わずもがな、福祉における利用者支援も柔軟性が必要ですから。
最後に、支援者と本人が集まる担当者会議を想像してみましょうか。その本人の暮らす生活を味噌汁とすると、本人は一番主役の具となります。ご家族はそれを引き立てる別の具、それに支援者が各個性のある具として存在することになるかと思います。もちろん、主役を食ってしまうほどのインパクトのある具が支援者だったりしたら、少し考えなければなりません。あくまで、その味噌汁の主役は利用者本人であることが、その味噌汁を一番美味しく食べられるための前提ですから。
そんな風に考えると、私だったらどんな具が良いかなと…。そうだな、あってもなくてもいいけど、あったら少し嬉しくて彩りが出る刻みネギくらいのポジションがいいなと。豚汁なら七味唐辛子。
それとなく主役を引き立てて、他の具の美味しさを一段階引き上げるような、そんなポジション。それでいこう。私は、「七味」になりたい。言うなれば、「楽しみ」、「慎み」、「うまみ」、「深み」、「わかりみ」、「ありがたみ」、たまに、「悲しみ」。
「七味」だけに、これでちょうど「み」が七つになったか。うん、七味だけに上手くまとまって大満足。ただし、七味は大量に入れると美味しさを損なうので、それは「やばみ」ということになるでしょう。
おわりに
ご自身の関わりを、味噌汁に例えたらどんな具になるか、または味になるのか…そんなイメージをもって福祉の世界に携わってみると、また面白いかもしれません。
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●おいしい味噌汁をつくり、利用者さんにしっかり味わってもらう!
一人ひとりが、柔軟性と引き立て力のある人となれば、利用者さんに喜んでもらえる!
すばらしい味噌汁職人になればいい!